ダンテを読んで

リストの《ダンテを読んで》は、弾いてみたいと思いながら、弾けていない作品の1つ。

演奏時間15分とかなりの大曲でしかもソナタのように楽章間の切れ目なしのノンストップ。技術はもちろん、弾き手に(聴き手にも)集中力を求める。

ダンテの文学作品『神曲』からインスピレーションを受けて作曲したのだが、元の文学作品の中には、ダンテが実際に思いを馳せていたベアトリーチェという女性が出てくる。《ダンテを読んで》も、『神曲』の「地獄篇」の壮絶な世界が音で描かれるのだが、時折現れる極めて美しくロマンチックな旋律は、恐らくベアトリーチェと結びつくものなのだろう。

この女性、若くして亡くなってしまったそうだが、ダンテは生涯思い続け、『神曲』の中でも、道に迷ったダンテを心配し、助けようとする女神的な役割を担っている。

ふと思ったのだが、若くして亡くなった女性を生涯思い続け、それだけならまだしも、自らの大作の中に重要な役として登場させるというのは、現代の感覚でいえば、妄想を膨らませすぎのおかしな人以外の何モノでもないわけで、やはり歴史的傑作というのは普通の感覚からは生まれないのだなと思わざるをえません。

こんなことを考えながら、いずれ《ダンテを読んで》を弾きたいと思いつつ『神曲』をポツポツ読み始めているのでした。

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