テキスト

ハイドン:四季

今年も、大阪シンフォニッククヮイア様の楽曲解説を執筆させて頂きました。曲は、ハイドンのオラトリオ《四季》です。大作曲家にしては珍しく、社会的に成功をおさめ、順調な人生を歩んだハイドンですが、直後にモーツァルトとベートーヴェンという巨人がいることもあり、やや地味な印象は否めないですね。しかしやり手の台本作家スヴィーテンとタッグを組んで作曲された《天地創造》《四季》と続く2つの大作オラトリオは、ハイドン真の傑作であり、大変聴きごたえのある作品です。当時もこの2作は社会現象といえるほどの大成功を収めたといわれていますが、それも納得です。
ハイドンは宮廷音楽家として雇い主の要望にしっかり応え、多くの曲を作りました。ピアノソナタもありますが、やはりモーツァルトやベートーヴェン程にはコンサートで演奏されているとはいえず、自分にとっては触れる機会がやや少ない作曲家でした。今回の執筆の機会を頂いたことは大変良い経験でした。

そういえば、大学時代に、ハイドンの弦楽四重奏の分析をゼミで発表しなければならず、間に合わなくてほぼ徹夜で準備した記憶がよみがえってきました。。。

ところで、歴史に残る作曲家は、音楽が素晴らしいのみならず、その人生も割と波乱万丈なことが多いと思います。モーツァルトは映画「アマデウス」でも語られている通り金銭感覚がなく困窮していたり、ベートーヴェンは耳が聴こえないという絶望を乗り越えたり。。。ショパンはジョルジュサンドとの恋愛が有名です。音楽に加え、人が興味を持つような人生の”ストーリー”があると、人々の記憶により残りやすいのでしょう。自分の好きな某Jポップのアーティストも不倫でたたかれたり薬物で逮捕されたりしましたが、それも歴史に残るためには必要なのでは・・・この辺でやめておきます。このような波乱万丈なストーリーがほぼ無い大作曲家ハイドンのお話でした。

短編小説『時の渦に巻き込まれた街』

ある日、町の外れに住む変わり者の発明家、タカシは、時間を逆行する機械を完成させた。この機械で世界を変えると確信していたタカシだったが、初の試験運用は単純なものだった。昨日食べた絶品の朝食をもう一度楽しむためだ。しかし、機械を起動した瞬間、全てが予想外の方向へと進み始めた。町全体が時間の渦に巻き込まれ、住人たちは様々な時代に散らばってしまった。

タカシ自身は恐竜時代に迷い込み、意外なことに恐竜たちは非常に礼儀正しい社会を築いていた。恐竜たちと交流するうち、タカシは彼らの知恵と、時空を超えるコミュニケーション方法を見つけ出した。一方、町の図書館員であるミホは、江戸時代の京都に飛ばされた。忍者の一族に保護され、忍術の訓練を受けるうちに、彼女もまた、過去と未来をつなぐ通信の秘密を学ぶことになった。

この時、タカシとミホは、タカシの機械に秘められた未知の機能を発見する。それは時間と空間を超えたメッセージの送受信が可能なことだった。この発見により、彼らは異なる時代にいながら情報とアイデアを交換することができるようになった。ミホは江戸時代の知恵をタカシに伝え、タカシは恐竜時代で得た知見と組み合わせ、ついに時間を正常に戻す方法を見つけ出した。

しかし、時間を元に戻すためには、町の人々全員の協力が必要だった。町の中心で、皆が頭にフルーツを乗せて逆立ちし、特定のリズムで歌を歌うという、信じがたい儀式を行う必要があった。町の人々は最初は躊躇したが、タカシとミホの指導のもと、この奇妙な儀式を完遂した。

奇跡的に時間が正常に戻った後、町の人々はそれぞれの体験を共有し、以前よりもさらに強い絆で結ばれた。タカシの機械は町の記念物として残され、未来への警告と希望の象徴として語り継がれることになった。そして彼らは常に心に留めていた、「時は、たとえそれが破茶滅茶であっても、人々を結びつける力を持っている」という教訓を。

短編小説 「電子レンジでチーズケーキを焼く日」

ある晴れた日曜日、ヨシオさんは異常なほどの食欲を感じていました。朝食でパンケーキを十二枚食べたにも関わらず、まだお腹がグーグーと鳴っていたのです。彼は思い立ち、自分でチーズケーキを作ることに決めましたが、オーブンが壊れていることを思い出しました。しかし、ヨシオさんは諦めません。彼は「電子レンジで何とかなるはずだ」と独自の理論を展開しました。

キッチンに立ち、クリームチーズ、卵、砂糖、そして少しの塩をボウルに入れ、手元にあったハンドミキサーで勢いよく混ぜました。ヨシオさんはさらに冒険心を出して、冷蔵庫からピクルス、カレーパウダー、そしてチョコレートチップスも加えました。「これが新感覚チーズケーキの誕生だ!」と叫びながら。

彼はその奇妙な生地を耐熱容器に入れ、電子レンジにセット。ボタンを押した瞬間、キッチンには奇妙な香りが立ち込め始めました。待つこと数分、電子レンジのチャイムが鳴り響きますが、出てきたのは見た目も怪しげな、カラフルな何かでした。

恐る恐る一口食べてみると、意外にもそれはそれは美味!「革新的だ!」ヨシオさんは感動し、自分の料理の才能に驚きました。そしてその日、彼は友人たちを招いてこの「カレーピクルスチョコチーズケーキ」を振る舞いました。

友人たちは一口食べ、顔をしかめつつも、「ヨシオの料理はいつも面白いね」と笑いながら言いました。その日の夜、ヨシオさんの家からは笑い声が絶えませんでした。そしてみんなはこの日を「電子レンジでチーズケーキを焼く日」として記憶に残すことにしました。